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インタビュー企画の仕掛け人

(Mon Jan 28 12:15:00 JST 2013/2013年2・3月号 Creativeが生まれる場所)

“ReBORN クラウン”で商品と企業広告合体のスケール感 [トヨタ自動車]
シンガタ   クリエイティブディレクター   佐々木 宏氏

佐々木 宏氏

1955年の発売以来、黒塗りの高級セダンのイメージが強いトヨタ自動車「クラウン」だが、今回の新型発表では車体色にピンク色が採用され、発表2日後の読売新聞朝刊の一面からテレビ面の広告をジャックするなど、大きな話題を集めた。一連の展開で注目すべきは、この新車発表自体が先行して行われていた企業広告「ReBORN」の一環であることだ。企業のメッセージと商品広告を一体化する新たなキャンペーンの取り組みについて、クリエイティブディレクターの佐々木宏氏に聞いた。

──佐々木さんとトヨタのかかわりも長いですよね。

  僕は28歳で新聞雑誌局からクリエーティブ局に移ったのですが、そのときに配属されたのがトヨタのチームでした。まさにコピーライターの“見習い”の時分からかかわらせてもらっていたわけですが、それから15〜16年間、公害や環境問題、不況によって車がだんだん売れなくなり始めた頃も経て、「エコプロジェクト」のような企業広告もやらせていただきました。それが僕にとってはいい経験になっています。ただ、最近はちょっと離れていたんですね。

──2011年10月から始まった「ReBORN」キャンペーンは、久しぶりのお仕事だったということですか。

  ほぼ10年ぶりでしたね。トヨタの企業広告として始めたものですが、今回の新型クラウンの広告も、この「ReBORN」キャンペーンの一環として考えたものなんです。

企業広告の一環として

──企業キャンペーンの一環というと?

  これまで車の商品広告というと、企業広告とはまるで関係ないところで車を売っていたところがあったと思うんです。特にトヨタの場合、販売店がトヨタ店、ネッツ店など4つの系列に分かれていますから、企業広告と車種ごとの商品広告は別だったんですね。販売店に行っても、「ReBORN」というポスターがいっぱい張ってあるわけでもない。企業広告とはそういうものかなと思いつつも、広告の作り手としてはちょっと不満というか、企業広告で作り上げた財産を利用しないのはもったいないなという気持ちがあったんです。それで、機会があれば一台一台の車も少しずつ「ReBORN化」していけたらと思っていました。

──それが今回の広告に北野武さんとジャン・レノさんが出演することにつながるわけですね。

  「ReBORN」キャンペーンは、現代に蘇った織田信長と豊臣秀吉が東北地方をドライブするという設定の「大河ドラマシリーズ」と、若者に免許を取ってもらうことを目的とした実写版ドラえもんの「免許を取ろうシリーズ」の二つを柱に展開しています。織田信長には木村拓哉さん、豊臣秀吉には北野武さん、それから「実写版ドラえもん」のドラえもん役はジャン・レノさんにやってもらっていますが、「ReBORN」キャンペーンの一環としてクラウンの商品広告をやるなら、二つのCMシリーズの顔を合体させてもいいんじゃないかと思ったんですね。そうすることで、今までの「ReBORN」キャンペーンが、あたかも新型クラウンのティーザー広告に見えるぐらい、スケールの大きい広告になると考えたんです。

──それにしても、ピンクのクラウンはインパクトがありましたね。

  実は僕の冗談半分の提案を採用していただいたんです。車がモデルチェンジしたといっても、余程の変化がないと世間一般の人には伝わらない。ピンクというのはクラウンが身に纏うとは思えない色ですけど、だからこそクラウンが変わったことを伝えるには有効だと思ったんですね。
  なぜ、ピンクなのか。まず、ドラえもんの「どこでもドア」がピンクだということがあります。それから、あくまで主観ですけど、僕の中にはかっこいい人はピンクが似合うというイメージがあるんです。イタリアのちょい悪おやじとか、日本で言えば三國連太郎さんとか、ピンクが似合いますよね。それだけでなく、なでしこジャパンもピンク色を纏っているし、桜の色もピンクです。日本を象徴する色でもある。
  もう一つの大きな理由は、ドラえもんのCMでジャイ子役をやってもらっている前田敦子さんくらいの年の女の子が「このクラウンなら買ってもいい」と言ってくれるようなクラウンにしたほうがいいというイメージがありました。そのぐらいクラウンが変わることで、「ReBORN クラウン」とか、「クラウンは生まれ変わります」と初めて言えるんじゃないかと思ったんです。

「届く」新聞広告の使い方

──新聞広告は一面の題字横からテレビ面まで使ったセミマルチ広告でしたが。

  新聞は読売新聞への単独出稿でした。僕が新聞雑誌局にいた当時の感覚で言えば、新聞広告をやる場合には全国の販売店対策もあり、全紙で何度もやるのが普通でしたが、今は残念ながら昔のように予算が潤沢に使える時代ではありません。新聞15段を使って全紙に広告を掲載しても、その回数が少なければ全然届かない広告になってしまう恐れもある。それよりは、掲載紙を絞ってインパクトのある紙面使いをするほうがストーリー性のある展開もできるし、読者により届く広告になると思ったんですね。

──ストーリー性というのは?

  新聞を一面から読むか、テレビ面から読むかは人によると思いますが、一応、テレビ面から読むと考えて、ジャン・レノさんと北野武さんが出会うというストーリーを新聞で表現しました。新聞のセンターページにある見開き30段広告で、2人が出会うように考えたんですね。それから各面にちりばめられた小枠広告はピンク色で統一し、「クラウンが生まれ変わった」というメッセージを伝えました。政治面では、ジャイ子の前田敦子さんを登場させました。普通、政治面に「前田敦子」というワードは入らないという意外性を狙ってのものです。

 トヨタ自動車

2012年12月27日 朝刊〈16面・17面〉

 トヨタ自動車

〈18面〉

 トヨタ自動車

〈15面〉

 トヨタ自動車

〈政治面〉 突き出し小枠広告

「ReBORN クラウン」の意味

──今回のクラウンの広告のベースになった「ReBORN」キャンペーンについて改めてお聞きしたいのですが、どういう経緯から生まれたキャンペーンなのでしょうか。

  東日本大震災が起こった後、テレビからACジャパン以外のCMが一斉に消えましたよね。当時は、「いま、うちは宣伝なんかやるような状況じゃない」という企業がほとんどでした。当時の広告関係者の多くも同じ思いだったと思いますが、僕はこういう時期だからこそ何か広告にできることがあると考えました。それで始めたのがサントリーの企業広告テレビCM「歌のリレー」です。坂本九さんの「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」を、71人のミュージシャンや著名人が歌い継ぐCMです。
  そのCMにトヨタの豊田章男社長が興味を持たれて、僕のところに連絡がありました。それで、お会いしたら、私の思っていた大企業の社長というイメージとはまるで違ったんですね。豊田社長は今回の新型クラウンのプレゼンテーションも自らされていますが、発想も若々しくて、偉い人としゃべっているというプレッシャーもあまり感じさせない。非常にフランクな態度で接していただいたんです。それで私も図に乗って、「歌のリレー」のような広告ではなく、あえて違う提案をさせていただいたんです。

──なぜですか。

  当時は、東北が壊滅的な被害を受けて、円高で輸出も低迷し、未来も見えない中で、日本全体が自信を喪失していました。そういう時だからこそ、単なる共感や元気を出そうというメッセージではなく、自動車会社として社会に訴えるべきことがあると思ったのです。新幹線も動かない中で物資を運ぶ運送会社を例に出すまでもなく、日本の物流を支えているのはやはり「車」だという強い実感もありました。それだけでなく豊田社長とお会いしたときに、東北でかなりの数の販売店や部品工場が被災した話も聞きました。日本が再生しないとトヨタは再生しないし、その逆も言える。そういうトヨタが良い広告を作り始めたら、日本の広告業界の景気も間違いなく回復する。それが「ReBORN」という言葉に込めた意味です。
  だから、「ReBORN クラウン」の「ReBORN」というのは、単なる「NEW」の代わりではないんです。かつて国鉄が「ディスカバー・ジャパン」で「日本再発見」とやったように、日本をもう一回復興させようという志の高いキャンペーンの一環として今回のクラウンの広告はあると思っています。

佐々木 宏氏

1954年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。1977年電通入社。新聞雑誌局を経て、クリエーティブ局。クリエーティブ局長を経て、2003年7月「シンガタ」設立。ソフトバンク「白戸家」シリーズ、サントリー「BOSS」、ANA「ニューヨークへ、行こう。」(9.11直後の新聞広告)、JR東海「そうだ 京都、行こう。」など、企業イメージや商品イメージのブランディングをはじめ、数多くの広告作品を世に送り出し続けている。第29回(2012年度)より読売広告大賞選考委員長に就任。