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インタビューキーパーソン

(Fri Jun 05 10:00:00 JST 2015 /2015年6・7月号 リーディング・トレンド)

今回のテーマ 「若者世代」
〜世界に先駆け、「さとり世代」向け商品を〜

原田曜平 氏
博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー   

消費活動が消極化しているとされている若者たち。彼らの実態や新たな好奇心・ライフスタイルに詳しい博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平さんに聞きました。

今、なぜ、若者マーケット?

  日本企業は過去20年ほど、若者マーケットを軽視してきました。人口ボリュームの多い団塊世代向けの商品開発に注力してきたためです。しかし、近い将来、日本の人口ピラミッドの重心が下の世代へと移ります。企業が団塊世代の消費に大きく期待できる期間は今後10年ほどとそう長くはありません。2025年を過ぎると団塊の世代が少なくなり、ある程度、人口ボリュームが均衡な社会になります。若者のマーケットが熱い時代が到来しますが、その時点になってからではマーケティングのターゲットにしても、リサーチの面などから手遅れになります。今、企業がマーケティング活動で大きく狙わなければならないのは現在の20代です。

20代は消費活動に消極的では?

  現在の20代は、「車を買わない」「お酒を飲まない」「海外旅行に行かない」など消費離れが顕著で、「さとり世代」と言われます。“ゆとり教育”を小、中学校で受けた1988年4月2日生まれ以降をさす「ゆとり世代」にも重なります。車や海外旅行といったかつての若者が飛びついた消費が落ち込んでいるのは、企業が現在の主要顧客の団塊世代やそれより上の世代に重点を置き過ぎて、若者向けのマーケティングをしていなかった点も大きいのです。エナジードリンクや男性フェイスケア商品など、現在のこの世代の消費が牽引(けんいん)して成長している市場も生まれてはいるのです。

経済の成熟が影響?

  経済が成長ステージと成熟ステージにある若者では、メンタリティーとライフスタイルが大きく異なります。昨今の日本は経済が成熟ステージに入り、根本的なところで過去の同世代たちと断絶が生まれています。団塊世代が若者だったころは政治、バブル世代は消費と、興味は違いましたが、それぞれの時代の若者が欲しいモノはほぼ共通していて、きちんと事前リサーチをしなくてもモノは売れました。  
  ここ数年日本では、育った地域から出て行かず地元での生活や消費を楽しむ若者が増えていると注目されました。私は彼らを「マイルドヤンキー」と名付けましたが、同じ傾向は1980年代のアメリカでも見られました。韓国においても、今年、若年層の特徴を表す言葉として、「さとり世代」がはやりつつあります。韓国は奇跡の経済成長を遂げて経済が成熟期に入り、気質も日本に似ています。

企業の海外展開の成否を左右?

  日本国内では、現在は人口のボリュームが小さいために魅力のない市場に見えますが、「若者」という横串でアジア全域を市場として考えると大きな展開が望めます。  
  アジア地域では、東南アジアなどは国民の平均年齢が20代の国が少なくありません。ソーシャルメディアの普及によって、カフェで音楽を聞きながらスマートフォンでSNSを通じて人とコミュニケーションを取るなど、同じ世代間においてアジア各国で共通項が増えつつあります。幸いにも、このマーケットでは日本が他国の少し先を走っています。今の日本の若者の価値観や本質を確実に捉えた商品やサービスを作れば、3年後の東アジア、5年後の東南アジアでも売れるでしょう。企業はさらなるグローバル意識を持つ必要があります。

若者の消費をつかむには?

  今の20代は恋愛に興味を持つ人が減っているとされていますが、一方で同性と一緒に散歩やランニングを楽しみ、ハロウィンなどではしゃぐ姿が多く見られます。エナジードリンクは栄養ドリンクと比べて安価ではありませんが、「格好いい」と人気を集めています。ファッションとして身に着けるために高額なヘッドホンを購入する人たちも増え、多様性に富んでいます。これまでのこの世代と違う動向や彼らの新たな領域への意欲に着目することです。

日本企業が今、できることは?

  博報堂ブランドデザイン若者研究所には大学生を中心とした300人くらいが「現場研究員」として所属しています。我々は彼らと共同で若者のライフスタイルや消費動向を研究し、企業と商品開発などを行っています。コーヒー飲料を作る場合、彼らが「これだったら飲みたい」というところまで徹底的に話し合っています。モノを作る段階から顧客となる一般の人たちの感覚を取り入れることができれば、必ず売れるものができると思います。
  企業は、経済の成熟期に登場した現在の若者について真摯(しんし)にリサーチをしなければ生き残ることができない時期にきています。マーケティングリサーチを複雑に考えてしまいがちですが、社内での説得のために仮説を検証するのではなく、どんな分野であっても欲しい人に話を聞いて求められているモノを作ることです。原理原則に誠実で本当に意味のある調査ができる企業が勝ち残ります。今、日本の若者マーケットをしっかりと見れば、世界に通じる市場を開拓して企業の未来と経済のひとつの柱を作ることができるでしょう。

Yohei Harada

1977年東京生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。著書に『間接自慢する若者たち』『女子力男子』『ヤンキー経済』『さとり世代』など。