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インタビューキーパーソン

(Mon Aug 05 14:00:00 JST 2013 /2013年8・9月号 ojo interview)

髙坂 俊之 氏
東急エージェンシー   クリエイティブソリューション本部 プロジェクトデザイン局長

髙坂 俊之 氏

メンバーの心に飛び込みプロジェクトの「志」を作る

  昨年誕生した渋谷の新たなランドマーク「渋谷ヒカリエ」のブランディングを手掛けた。都市開発や商品開発などのプロジェクトで、ブランディングや広告戦略といったソフト面を動かしている。プロジェクトのデザインは、イマジネーションとマネジメントのバランスをとって進めていく。都市開発のブランディングでは携わる人が非常に多く、長い期間を必要とする。一番大切なことは何を志すのかという共通言語だ。それぞれのスペシャリストが全員で共有できるプロジェクトの「志」を練り上げる。
  プロジェクトの行くべき道筋への「腹落ち感」はみんなで作る。「世の中のルールが変わり、正解がないとされる時代だからこそ、多くの人間が知恵を出し合う中で作り上げることが重要」と考えている。
  海に素潜りをするように、ワークショップの議論に参加する一人ひとりの心の中に飛び込む。素潜りは経験回数を積み上げるほど、海底で待ち受ける危険を察知し、宝のある場所に気づきやすくなる。これまでに150回以上のワークショップでの素潜りを重ねた。みんなが「そうだよね」ということばかりではなく、「違和感」を感じたところに宝があると確信するようになった。
  学生時代、ミュージカル劇団を主宰し、脚本と曲を作って演じていた。歌や踊りといった生身の人間が持つ力に魅了された。プロジェクトでも舞台のように「これっていいなあと全員で共感できる場づくりをしたい」という気持ちがある。何を世の中に提案していくかを顧客と一緒に考えるスタイルを心がけ、「どこへ向かうのか、どうやって進むのか」という道筋を作っていく。
  「渋谷ヒカリエ」の名前には、訪れる人に未来への前向きなエネルギーを届ける思いを込めた。プロジェクトは前へ向けて投げかけるものだ。未来を映すプロジェクターの先に今、何を見るのか。そこから明日へのエネルギーが生まれている。

「渋谷ヒカリエ」から次世代の夢を照らしたい

――渋谷ヒカリエの開業から1年が経ちました。渋谷の新たなランドマークとして賑わっています。

  おかげさまで大変好調です。この1年間の来館者数は2000万人以上と当初予想を大きく上回っています。開業の4年前から、ワークショップを行ってブランディングの議論を進めてきました。渋谷の街から常に新しい生活の楽しみ方を提案することを目指しています。多くの情報や文化を発信し続け、渋谷から未来を照らし、世の中を変える光でありたいという志から、「渋谷ヒカリエ」と名付けました。

――渋谷ヒカリエは渋谷の街の新たな可能性を体現しています。

  渋谷の再開発が進んで完成形になるのは2027年頃です。渋谷ヒカリエ開業は一施設の誕生というより、渋谷再開発のリーディングプロジェクトの始まりで、これから街全体が変わっていくという印象を残したいと考えました。社会的な出来事として、渋谷ヒカリエの誕生を感じてもらうためにはどう伝えるかを意識しました。渋谷は誰もがチャレンジできる街です。自分の夢に向かっている人たちの力がみなぎっている街の魅力も照らしていきたいです。

――渋谷の街メディアへの新たな取り組みも始まっています。

  次世代のメディアのあり方を考えるプロジェクトがスタートしています。まずは街というパブリックなメディアとパーソナルな空間である個人の「スマホ」とをつなぐ試みが、ハチ公口交差点前のQ'S EYEでこの7月末から始まりました。街には偶然の出会いがあります。将来的には、街のあちこちのサイネージで流れるさまざまなコンテンツの中から、訪れた人がぴんときた情報が瞬時に個人的なおもてなし付きで送られてくる。そんな「であいがしらのハッピー」が作れたらおもしろいと思っています。

――企業組織の業務改革のプロジェクトもされています。

  組織を作っているのは個人です。業務改革では、そこで働く個人が活力を持って仕事の未来を描いていくことが一番大事です。働く人が活力を持つには何が必要かを考え、大学院では「職務活力感」を研究しました。そこで得た成果を、理念や行動規範づくりのプロジェクト設計に活かしています。組織で働く個人として「自分が将来どうありたいか」を考えることは、未来を考えているようですが「今の自分」が元気になります。

文/正本恭子  写真/小原啓樹

髙坂俊之(Toshiyuki Takasaka)

東急エージェンシー プロジェクトデザイン局局長 プロジェクトプロデューサー。チームV-WAYSファシリテーター。プロモーション、CI、マーケティングなど様々なプランニング領域を歩んだ後に2011年より現職。東急グループの都市開発プロジェクトなどのソフト面からの推進をはじめ、クライアント企業の商品・サービス・ブランドなど価値開発プロジェクト、企業内の理念・行動規範など業務改革プロジェクトの設計と実践管理を担う。立教大学卒業。筑波大学大学院修了。産業・組織心理学会会員で、職務に対する活力を引き出すことをテーマにした研究発表も行っている。