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インタビューキーパーソン

(Mon Oct 07 14:00:00 JST 2013 /2013年10・11月号 ojo interview)

野添 剛士 氏
「SIX」   代表取締役社長 クリエイティブディレクター

野添 剛士 氏

「最強の六人」が集結し、心をつかみ、世界を変える

  「広告は世界を変えるメディアアート」と語る。商品が世界を良くするために生まれてくるのであれば、広告クリエイティブの力でもっと世界を変えることができる。自分たちのクリエイティブの質を究極に高めたいと、博報堂のクリエイター6人で立ち上げたのが、今年6月に始動した「SIX」だ。次世代型クリエイティブの開発を標榜し、デジタル領域に強いメンバーが、ユーザーの変化を敏感に察知しながらブランドとユーザーの新たな絆をつくる。
  SIXのメンバー全員がこれまで、自分のクライアントを持ち、自分のクリエイティブチームを率いるリーダー的存在だった。全員がリーダーとして発言し、摩擦も生まれるが、「本当に強い人間を集めたチームで、全身全霊をかけてクリエイティブを生み出す」との思いを共有している。
  世の中から応援されるブランドになれるかどうかが、企業の力を決める時代になったと感じている。と同時に広告の枠を超え、クリエイティブの持つ力の可能性が広がっている。SIXのメンバーとともに、「本当に心に残るもの、本当に人を動かすものを作る」。
  今年の「カンヌライオンズ国際クリエイティビティー・フェスティバル」で審査員を務めた。その中で臓器移植にかかわるブラジルのサッカーチームのキャンペーンが心を打った。ファンクラブカードに署名するとドナーの意思表示になるという。一つのサッカーチームのアイデアが、ドナー不足問題が深刻化しているブラジル社会に変化をもたらしている。
  子供のころからアイデアを考えることが大好きだった。いいアイデアは社会を変える大きな力を持っている。それを自分が作ることができる瞬間に、自分が生きている意味があると言う。
  「いいアイデアをどう作るかがクリエイティビティー。人の心をつかみ続けるアイデアがあれば、そこからすべてのものが動き始めると思う」

「ファンにする」アイデアでブランドとユーザーの絆を

――「SIX」はブランドとユーザーの新たな絆づくりを掲げています。

  メディアや社会構造の急速な変化で、ブランドは時代とのズレを抱えています。ブランドがユーザーとコミュニケーションをする時、ユーザーにどんな体験を与えることができるかが重要になっています。ユーザーにシェアされるコンテンツやサービスを開発し、ユーザーをファン化して、ブランドが次のステージに進むための道筋をお手伝いします。
  また、日本人が作るデジタルコンテンツは、「おもてなし精神」で細部までよく考えて作り込み、世界的に評価されています。日本の強い部分を持つデジタル系企業と組み、価値のあるものをグローバルレベルで発信したいです。

――ご自身が手がけられた2011年7月の「スペースバルーン・プロジェクト」は、ブランドとユーザーの新しいコミュニケーションの形として注目されました。

  宇宙を舞台にした初のリアルタイムコミュニケーションに挑戦しました。サムスンテレコムジャパンのスマートフォン「GALAXY SII」を気象観測用のバルーンに乗せ、上空3万メートルの成層圏まで打ち上げました。「GALAXY SII」の画面には、次々とユーザーのメッセージを表示し、その様子をライブ映像で配信しました。
  スマートフォンで何ができるかを考え、「人と人をつなぐ」という通信技術の本質価値に着目しました。東日本大震災の後で、みんなが「希望」に対するリアルな声を求めていると思いました。舞台は僕らが作りましたが、コンテンツは一人ひとりのユーザーの声です。このプロジェクトは3日間で延べ38万人が視聴し、宇宙を介して人と人がつながったと実感しました。知人から、うれしい話を聞きました。「子供がずっと見ていた。あの子が将来、宇宙飛行士を目指すとしたら必ず今日の体験を話すだろう」と。

――ブランドとユーザーを「共有できる体験」でつなげたんですね。

  ブランドがユーザーに、「一緒に目指していこうよ」という方向を示し、ユーザーと同じ方向を向く瞬間を作ることができました。ブランドがユーザーを応援し、ユーザーからも応援してもらう関係を作ることができるかどうか、商品が持つ本質価値から、ユーザーがどんな体験をできるかが大切です。本当に意味のあるものだけで、どれだけのストーリーを作るかが、クリエイティブだと思います。

文/正本恭子  写真/小原啓樹

野添剛士(Takeshi Nozoe)

博報堂入社後、クリエイターとして活躍。同グループの「SIX」代表取締役社長。「For the Brand」と「For the People」の複眼でマスメディアでのブランディングから、ソーシャル、体験デザインまで統合的にデザインしていくのが特徴。茶道をたしなむ。好きな言葉は「和敬清寂(わけいせいじゃく)」。元高校球児。Cannes Lions 2013 審査員。主な仕事は「SPACE BALLOON PROJECT」「JIM BEAM」「Kiss a ZIMA」。受賞歴は、2011年度クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、文化庁メディア芸術祭グランプリ、Cannes Lions Bronze ほか。 「SIX」は6人のクリエイターとビジネスプロデューサーの7人。