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インタビューキーパーソン

(Mon Oct 06 15:00:00 JST 2014 /2014年10・11月号 SUGOI JAPAN SPECIAL INTERVIEW)

山口 晃 氏
画家  

山口 晃 氏

知覚を再現する日本 視覚を再現してきた西洋

  大和絵や浮世絵を思わせる伝統的な手法を採り入れつつ、時空を自由に混在させ、人物や建築物を緻密に描き込む作風で知られる。例えば「東京圖 六本木昼図」は、空から眺めた六本木が描かれている。そこには古(いにしえ)の和風建築とモダンな高層ビルが共存し、細部を見ると、サラリーマンも歩いていれば、江戸時代の町人が高層ビルの窓を拭いていたり、街角で侍がケンカしていたりする。時空を超えた摩訶(まか)不思議な世界が展開されている。
  子供のころ学校の前で写生をしていると、通りかかったおじさんが「はあーっ」と言って立ち止まるくらい絵がうまかったが、絵描きになるつもりはなかった。しかし、絵は上手になりたかった。それで、私大に1年寄り道したあと、予備校に通い東京芸大の絵画科油画専攻へ。「上手の中身もわからず芸大を受けて、そこにいれば何か上手になるだろうとやっていたんですけど、油絵というのは、やはり西洋美術、アートなんですね。技芸とは違う」
  悩みに悩んだ末にたどり着いたのが、日本美術の“近代化”をもう一度自分自身でやり直してみること。日本の古美術を貪欲に吸収していったが、それは外国人が未知の日本文化を発見して面白がる感覚に近かった。
  例えば、西洋絵画は近くのものは大きく、遠くのものは小さくパースを付けて描く遠近法が基本だが、古い日本の絵には遠近法がない。「さらに不思議だったのは、地上5〜10メートルあたりにたなびいている雲です。なぜあるのかわからない」。それを「こういう雲を描くとどういう心持ちになるだろう。遠近法をつけないと、どういう心持ちになるだろう」と自分自身に聞いていった。
  「わかったのは、日本の絵は知覚を再現している。西洋は視覚を再現していることです。西洋絵画は500年前から知覚の一歩手前の視覚の再現を一心不乱に追求してきた。ところがカメラができて、それは画家の仕事ではなくなってしまった。日本の近代はその西洋絵画を学んだため、ずっと半周遅れだったんですね」

写真/八木澤芳彦