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広告リポートfrom America

(Mon Oct 05 10:00:00 JST 2015/2015年10・11月号 from America)

多様性国家アメリカにおけるイラストの真価
金田明浩   ニューヨーク駐在

  日本と比べるとアメリカの広告表現は、写真やイラストなど視覚の印象に重きを置いたクリエイティブが目に留まる。広告枠に関してもビジュアルが効果的に伝わるようスペースが設計され、その最たる例が屋外広告だ。一言でいえば巨大であり、東京の屋外広告に慣れた身でもニューヨークの屋外広告の視覚的インパクトには圧倒される。

  その巨大な屋外広告を用いることで、イラストを中心としたクリエイティブを効果的に展開したのは、クッキー菓子ブランドの「オレオ」だ。

  キャンペーンでは10人の新鋭アーティストが各人のテイストで、顔がオレオクッキーの擬人化キャラクターを描き下ろした。「遊び」をテーマとし、各作品には別途キーワードが割り当てられ、オレオの食べ方に関連したワード「twist(ひねって上下を分けて食べる)」・「dunk(牛乳に浸して食べる)」や、心情に関連したワード「dream」・「wonder」などを表現した。テーマに合わせて描き上げられた多種多様のイラストを見れば、「楽しみながら食べる」というオレオの商品イメージを無意識に感じることになる。私も50平方メートルはある巨大なこの広告を街で見かけ、壁画アートの多いニューヨークの街とマッチして、アートとしても楽しめる広告だと感じた。子供から大人まで幅広いターゲットに理解され、それでいてアートと思わせる、高いブランドイメージを伝えることができたのは、イラストだからこそ成しえた結果だ。

  また、イラストを用いた原稿は新聞広告でも力を発揮する。「Airbnb」は、空き部屋を宿泊場所として提供する人と旅行者をつなぐウェブサービスを世界190か国以上で展開している。同社はキューバでもサービスを開始したことに合わせて、イラストと絶妙なコピーを用いた広告を新聞に掲載した。ご想像の通り、キューバでのサービス開始は、7月のアメリカとキューバの国交回復の流れを受けたものだ。

  原稿の一つは、月面を思わせる球体に刺さる両国の国旗をイラストで描き表し、アームストロング船長の名言「One small step for a man, one giant leap for mankind.(これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である)」の後半をもじった「One giant leap for man's kindness(人の親切、おもてなしにとっては大きな飛躍である)」とのコピーを添え、キューバで1000以上の住宅が宿泊可能と伝えた。アポロ11号の月面着陸をモチーフとして、「宇宙開発とキューバ」という冷戦時代の表裏を原稿内に表した。ニュースを報じる新聞媒体の特性を生かし歴史的背景を伝えながらも、ポップなイラストを用いることで、重い印象を与えず、Airbnbを利用することで体感できるホストのおもてなし、他国の人々との交流という楽しさを伝えた。適したテイストを用いることで印象を自由自在に操れる、イラストの特性を生かした表現といえる。

  多民族・多言語国家であるアメリカでは、言葉がわからなくても伝わるクリエイティブが求められ、一目でわかるメッセージを好む国民性もあり、広告におけるイラストの役割は大きい。さらに、テイストや使用方法を変化させることで、ターゲットや印象を大きく変えられるイラストという手法の柔軟性が、多様性に富むアメリカ社会に適しているため、多くの広告に用いられているのだ。

金田明浩・ニューヨーク駐在

ニューヨークの街を散策すれば、いくつもの大きな壁画アートを見つけることができ、見知らぬ通りを歩く楽しみでもあります。写真は、古い線路を利用した公園「ハイライン」から見える、「勝利のキス」をもとにした壁画です。