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広告リポートfrom America

(Mon Dec 07 10:00:00 JST 2015/2015年12月・2016年1月号 from America)

「広告嫌い」を生み出さないために
金田明浩   ニューヨーク駐在

  情報過剰社会といえる現代において、強引な広告メッセージは生活者に届かないばかりか、「広告嫌い」を生み出している。ウェブ広告では状況が深刻で、ページフェアとアドビが2015年6月に発表した調査によると、世界で約2億人が広告を排除するソフトウェアを利用し、前年比で約40%増えたという。広告を受け入れてもらうために、生活者・読者を第一に考えた広告の編集・制作が求められている。

  その手法として注目が集まっているのが、ネイティブ広告だ。特に記事型は媒体社の編集力・体裁を生かし、広告を質の高いコンテンツとして提供することで読者に受け入れられており、アメリカでは新興メディア、新聞社ともに採用している。中でもニューヨーク・タイムズは自社内にネイティブ広告制作チーム「T Brand Studio」を設立し、力を入れている。昨年、同チームはエネルギー企業「シェル」のネイティブ広告を担当し、媒体はウェブだけでなく、同チーム初となる別刷り紙面も使われた。ウェブ版では、インフォグラフィックス・動画・アニメーションを用いて、都市の拡大と人口増、それに伴うエネルギー問題を語ることで、石油会社から先進的なエネルギー企業へと変貌を遂げるシェルの企業イメージを伝えた。結果、ユーザーの閲読時間は編集記事平均の2倍を超え、ミル・ウォードブラウンの企業好感度調査ではシェルのスコアが急上昇した。

  広告であっても質の高い編集を行い、読者がその価値を認めれば、編集記事と同等以上にメッセージを受け取ってくれる。またシェルの広告は一見企業色が薄い体裁だったが、企業好感度は上がり、広告目的は達成された。編集力をもってすれば、強引なメッセージがなくとも読者は理解してくれるのだ。

  広告コンテンツではなく、読者に合わせて広告様式を編集したのは、画像・動画メッセージアプリ「スナップチャット」だ。

  スナップチャットのコンテンツコーナー「ディスカバー」では、主に縦型動画が配信されている。縦型動画を採用している理由はアプリのユーザー層にあり、デジタルネイティブと言われる13歳から24歳が利用者の63%を占めている。彼らが最も慣れ親しんでいる画面はテレビやパソコンの横長でなく、スマートフォンの縦長画面であり、動画も縦型にした方が受け入れられやすいのだ。そしてコンテンツだけでなく、広告スペースも「3V(Vertical Video Views)」という縦長動画に統一している。既存の主流フォーマットである横型動画から逸脱し、広告主に再編集の手間をかけるとしても、若年層ユーザーの好みを優先し、結果的に広告効果も期待できる仕様を採用したのだ。また、3V広告は動画が始まる前に強制的に視聴させる形式ではなく、各コンテンツの間に挟まれる形式のため、コンテンツと同様にスワイプで飛ばすことも容易で、その点でもユーザーを優先した仕様といえる。

  アナログかデジタルかを問わず、広告は、中身も様式も受け手視点で編集することが求められている。メッセージの最終伝達者として、受け手である読者と直接接点を持っているのは広告主・広告会社ではなく媒体社であり、読者を一番知っているべき存在だ。日米問わずメディアの営業は広告を編集・プロデュースする能力を一層強化し、読者に受け入れられる広告を生み出す責任がある。

金田明浩・ニューヨーク駐在

ニューヨークで初めての冬を迎えます。執筆の11月初旬、早くもダウンコートを着ている人を見かけます。一方、半袖の人も見かけます。「人種により体感温度が……」とまとめようとしましたが、私も小学生の頃は冬でも半袖短パンだったことを思い出しました。