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広告リポートfrom America

(Fri Feb 05 10:00:00 JST 2016/2016年2・3月号 from America)

インフォグラフィックスは新聞社の強みか
金田明浩   ニューヨーク駐在

  アメリカの新聞社にとって、インフォグラフィックスとデータビジュアライゼーションは十八番の表現手法だ。難しい事象や数値をわかりやすく読者に伝えるという新聞社の命題を考えれば、二つの手法が多用され、その技術が磨かれていることは至極当然であり、日本の新聞社においても同様といえる。

  加えて、アメリカでは日本以上にそれらの手法を研鑽(けんさん)し、活用する理由が三つある。一つは、多民族・多言語国家であるため、文字より視覚的説明が重要視されるためだ。二つ目は、デジタルに注力していることが挙げられる。ウェブ上での掲載を前提としているため、インタラクティブなインフォグラフィックス・データビジュアライゼーションを用いることができ、またSNS経由の閲覧が日本より多く、インパクトを求めるユーザーとアイキャッチとなるインフォグラフィックスとの相性が良いため、拡散される傾向にある。最後は、二つ目とも関係し、データジャーナリズムが日本より発展していて、その表現としてそれら二つの手法が用いられているためだ。

  ウォール・ストリート・ジャーナルでは、平面の表現に飽き足らず、3D/バーチャルリアリティーでナスダックの21年間にわたる指数を表現した。まるでジェットコースターに搭乗したような映像とともに株価の浮き沈みを体感できるビジュアライゼーションだ。

  編集分野だけでなく、新聞社の広告チームが制作する「ネイティブ広告」の分野でもインフォグラフィックスは活用されている。編集の体裁を生かし、読者にわかりやすく伝えるというネイティブ広告の意図を考えれば、それらの活用は当然といえる。

  ニューヨーク・タイムズが制作したフォードのネイティブ広告はその一例だ。環境問題とフォード社の取り組みがテーマのため、文章と写真だけで表現すれば読者に伝わりにくい内容であるが、柔らかいタッチで描かれた複数のインフォグラフィックスを駆使することで、「世界で年間3億トンのプラスチックが使われる」、「バイオプラスチックの製造量は2013年から2018年までに300%になる見込み」など、現状の問題と今後の展望をわかりやすく伝えた。文章の補完役ではなく、全体を理解させる中核としてインフォグラフィックスを用いた事例だ。

  今後もコンテンツ閲覧の中心がウェブに移行するにつれて、テキスト表現にはないインフォグラフィックスの強みは増していく。画像表現のため、ウェブ上に溢(あふ)れる膨大なコンテンツの中でも目に留まる可能性は高く、SNS上でシェアもされやすい。アニメーションを用いたインフォグラフィックスも登場していて、動画フォーマットの普及はマイナスとならず追い風になるだろう。図示のわかりやすさに加え、デジタルに適した形態であることがインフォグラフィックスの現在の強みなのだ。

  このように、インフォグラフィックスは時代に適した表現だが、あくまで「手段」であり、「伝える意志と目的(および対象)」が伴わなければ、一時的な流行表現に留まってしまう。これは日米、また編集・広告分野を問わない課題であり、現状は新聞社の強みといえる表現手法を発展させるためには、各社ともインフォグラフィックスとデータビジュアライゼーションを手段として活用できる、意志と目的を持った人材の確保・育成に取り組むことが必要だ。

金田明浩・ニューヨーク駐在

過去最高気温のクリスマスイブになるなど、12月のNYは暖かい月でした。一転、執筆時の1月初旬は最低気温がー7℃となり、通勤が厳しい気候となりました。ニューヨーカーに言わせれば、まだまだ暖かいとのこと。極力、雪マークの天気予報を見ずに春を迎えたいです。