adv.yomiuriトップページへ

ojoトップ  > 広告リポート  > from Asia  > 外資系も挑戦 ドタバタCM

広告リポートfrom Asia

(Mon Dec 07 10:00:00 JST 2015/2015年12月・2016年1月号 from Asia)

外資系も挑戦 ドタバタCM
堀井葉月   バンコク駐在

  “タイのCMは泣ける”――と、言われる。検索エンジンに「タイ CM 泣ける」と入力すれば、多くの感動系CM事例を見つけることが出来る。国際的な広告賞の獲得などにより、それらのCMがタイ国外で紹介される機会が多いため、“タイのCMは泣ける”というイメージが浸透したのだろう。だが、私の実感としては、タイでは「ドタバタ&ナンセンス」なCMのほうが主流だ。

  『ロレアル パリ』がタイで展開するCMは、同ブランドの他国でのそれと比較すると、ずいぶん異色だ。たとえば口紅のCMは、タイ人オネエ系セレブと女優による、おとぎ話を題材にしたコント風だし、日焼け止めのCMは、紫外線と戦う女性レンジャー部隊が街ゆく人に商品を試用させるバラエティー番組風である。スマホ社会のタイ向けに、小さな画面上でも内容が分かりやすく、気軽に視聴でき、またSNSでシェアしたくなるような愉快なCMに仕上げている。かなり思い切った“現地化”だ。

  「ドタバタ&ナンセンス」でCMの拡散力を存分に増大させている例として、タイの若者に人気のネット番組『VRZO』(ヴィアールゾー)も紹介したい。これはYouTubeで定期的に配信されているバラエティー番組だが、1エピソードごとに1スポンサーと完全タイアップしており、いわば“全編CM”だ。

  初期の『VRZO』は複数スポンサーによる提供で、番組内でスポンサーロゴを映す程度だったが、個性的な出演メンバーや、『究極の二択・街角100人アンケート』といった企画、テロップや特殊効果を多用する映像作りなどで多くのファンを獲得したのち、現在のスポンサー完全タイアップ形式に移行したようだ。スピンオフ番組も含め、現在200本近いエピソードがアップされている。“全編CM”の『VRZO』が人気を保ち続ける秘訣(ひけつ)は、「ドタバタ&ナンセンス」を貫いている点にあるように見える。外資系食品会社がスポンサーの回では、スパイシーな味付けが特徴のインスタント麺をフィーチャー。これを大量の香辛料で凶暴なまでの辛さに調理し、じゃんけんに負けた男性メンバーに食べさせる、という企画を行った。スポンサーの商品を罰ゲームに使用するとは何事か。激辛麺を食べた彼は体が火照ってパンツ一丁になり屋外へ遁走(とんそう)、ほかのメンバーがそれを追いかけて消火器を噴射する……という徹底したふざけぶりは、スポンサー主導では作り得ないものだろう。しかし、ここまでやってこそ『VRZO』ファンに支持され、視聴回数が伸び、広告効果も向上する。

  「ドタバタ&ナンセンス」なCMを展開するにあたり、外資系スポンサーの広告担当者らには当然、不安やためらいがあっただろう。本社から来た上司への説得に苦労したかも知れない。だが、結果としてこれらのCMやネット動画は多数のタイの消費者に視聴され、シェアされた。

  “消費者本位”がネット時代の広告に求められるものと言われるが、外資系スポンサーの広告の場合は、加えて“現地本位”が求められるのではないか。本国で醸成してきたイメージの踏襲よりも現地消費者の感性への適合を優先し、あえて現地の媒体に表現手段をゆだねる――現地に受け入れられるための“編集”は、グローバルな広告展開において避けられない課題であり、今後も多くのスポンサーがそれに挑み試行錯誤することだろう。

堀井葉月・バンコク駐在

慣れというのは素晴らしいものです。飲食店で犬や猫がうろうろするのを、特に気にしなくなりました。ネズミが椅子に座っていても、あら、という程度。先日は、店主が野良猫を抱いた後そのままの手で塩を振った焼き鳥を、同席者と「猫塩味だ」とはしゃいで食べました。