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広告リポートfrom Asia

(Fri Feb 05 10:00:00 JST 2016/2016年2・3月号 from Asia)

たんぽぽの綿毛のように
堀井葉月   バンコク駐在

  『売れ残りがちな職業6種』――いきなり、“売れ残り”という単語で心をえぐってくるタイのインフォグラフィックス。個人事業主や教員、プログラマー等に未婚者が多いことを、かわいいイラストで表現している。続いて『売れ残らないための五つの心がけ』をアイコンとテキストで紹介し、「“売れ残り”にバイバイしよう!」とのメッセージで締めくくる。画像の最下部にはさりげなく、『MEETNLUNCH~東南アジアNo.1マッチングサービス~』のロゴとURL――そう、これは広告なのだ。

  タイでは、インフォグラフィックスがコンテンツマーケティングの手段のひとつとして活用されている。一般的に長い文章を読むのが苦手とされるタイ人消費者にとって、様々な情報の直感的な理解を可能にするインフォグラフィックスは好ましいものだろう。たとえそれが広告であったとしても、有益なコンテンツであれば、彼らは積極的に評価し、SNSでシェアする。Facebookでいいね!を多く獲得した、タイ語のインフォグラフィックス広告を見ていると、いずれも“ツボを心得た”かつ“抑制された”内容であり、感心する。“ツボを心得る”とは、見る人が「自分ごと」として認識し、また「誰かに教えたくなる」ようなテーマ・切り口を選ぶことであり、“抑制する”とは、自社の商品・サービスに直結する情報をミニマムに留め、「売らんかな」の気配を消すことである。

  たとえば、以下のインフォグラフィックスだ。タイトルは『スマホは人間関係を壊す?』――閲覧者は一筆書きの線に沿ってスマホ利用に関する調査結果とイラストを目で追っていくことになる。まず『18歳から45歳のタイ人女性のほぼ100%がスマホを利用している』というデータが紹介され、該当する閲覧者を引き込む。『75%の女性が、「わたしといる時にスマホばかり見ないで」とパートナーを責めたことがある』『しかし74%の女性がパートナーといる時にSNSをチェックしてしまう』の流れで苦笑を誘い、『過半数の女性はパートナーとの食事中もスマホを手放せない』の一文でハッとさせ、『だから70%の女性はスマホが人間関係を壊すかもと恐れている』の結論を胸に突き刺す。実はこのインフォグラフィックスは、「クリスマスや年末には、パートナーと一緒にハーゲンダッツのスペシャルメニューを食べよう」という販促の一環なのだが、画像内には同社のロゴのみで、商品画像どころかキャンペーン名『Share Real Moments』さえ表示していない。実に“抑制され”ている。

  コンテンツマーケティングに有効なインフォグラフィックスは、「たんぽぽの綿毛」のようなものではないか。新しい地で花を咲かせるために、種子を遠くまで散布する仕組み。種子はきわめて軽く、綿毛には上手に風をとらえる工夫が施されている。インフォグラフィックスにおいて、この“軽さ”を実現するのが “抑制”――「色々言いたくなる気持ちをぐっとこらえること」だ。モノを売るには一見迂遠(うえん)な手段のようだが、インフォグラフィックスは“拡散”に専従させたほうが効率的だと思われる。

  気軽な楽しみのために、人は綿毛を吹く。結果的に、たんぽぽの種の保存は実現される。表だって見返りを求めず、消費者を楽しませるコンテンツ提供に徹することが、インフォグラフィックス活用の賢い戦略だろう。

堀井葉月・バンコク駐在

生バンドをバックに客がカラオケできるレストラン。タイ人男女が歌うルークトゥン(タイ歌謡)を聞いていたところ、美声のタイ人中年男性に「あなたは日本人ですね?」と尋ねられ、『夢追い酒』など日本の歌3曲を捧げられました。どうも彼は警察高官のようでした。