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広告リポートfrom Europe

(Mon Oct 05 10:00:00 JST 2015/2015年10・11月号 from Europe)

壁を取り払うイラストの力
国友 俊   パリ駐在

  「バンド・デシネ」をご存じだろうか? デシネという音楽バンドではないか、と想像するかも知れない。実はフランス語圏のマンガのことを総称してバンド・デシネ(Bande Dessinée)と呼び、頭文字をとってBDと省略されることが多い。日本人は日本のマンガが世界に渡り、人気を博して多くのクリエイターにも影響を与えてきたと考えがちだが、欧州のマンガが日本の一流漫画家に影響を与えてきたことを見落としてはならない。日本が世界に誇る宮崎駿氏をはじめ、大友克洋氏、荒木飛呂彦氏、谷口ジロー氏、浦沢直樹氏などそうそうたる顔ぶれがBDから影響を受けている。

  日本のマンガは一コマで表現する内容が少なくスピード感を重視することに対して、BDは西洋絵画と重なる表現方法や着彩技術で我々の目を一瞬で釘付けにさせる力を持っており、時に「第9の芸術」とも呼ばれるほど、高度なアートの世界がそこにある。日本の漫画家はアシスタントを抱え、編集者との協力によって作品を仕上げることが多いが、BDの場合、多くの作家が一人で最後まで描き上げる、個の力で成り立っている。代表的なBD作家と言えば、SF映画「エイリアン」のデザインを担当していたメビウスや、「タンタンの冒険」で有名なエルジェなどが挙げられる。2012年に亡くなった巨匠・メビウスが描いた「エデナの世界」は、1980年代前半に仏自動車メーカー・シトロエンの広告販促物として作られたが、その後SFファンタジーの長編シリーズにまで発展した。アート性の高い広告には、想像力をかき立てる物語性があり、芸術作品にも通ずる文化的価値を生み出し、加えてマーケティングにおける課題を解決する力にもなり得ると感じる。

  近年の世界的なemoji(絵文字)ブームにも触れたい。日本人にとっては当たり前のemojiだが、今では英語の辞書に載るほど海外でも爆発的人気で、世界の共通言語とも言える状況だ。スマホでの広告キャンペーンは難しいと叫ばれる中、メールやチャットを多用するミレニアル世代にも受け入れられており、大手ブランドもこぞって広告キャンペーンに用いている。例えば、ペプシは自社イメージにつながる新しいemojiを7月17日のWorld emoji dayに合わせて発表し、そのPepsi emojiのイラスト画を掲げて好きな女性に告白する男性のプロモーションビデオを作成したところ、大きな話題を集めた。環境保全団体・WWFはemojiの中に絶滅危惧種に指定される動物が多いことに着目し、使用するたびに0.1ユーロの寄付を呼びかけるキャンペーンを行った。他にもイケア、マクドナルドなどがemojiを活用しており、米国ではアニメの映画化も予定されているほどだ。

  スマホアプリとの親和性が高く、小さくて可愛い、分かりやすいという単純さが、広告との間の「壁」を取り払い、若者に受け入れられる要因となる。エジプト文明以来の象形文字の名残もあるemojiは人間の知性の原点とも言え、将来大人たちが新聞でemojiを読む時代が訪れるかも知れない。

  芸術の持つ普遍的な価値を感じるマンガBD。気持ちを分かりやすく伝える手段としてのemoji。マンガもemojiも生活に密着したアートであり、知的好奇心をかき立てる点も共通する。言語や文化の壁を越えたグローバルキャンペーンでの活用が、ますます期待される。

国友 俊・パリ駐在

パリで行列している日本食レストランと言えばラーメンだ。最近出店が相次ぎ「どさん子ラーメン」「博多ちょうてん」に続き「一風堂」も出店することに。これまで人気No.1であった「なりたけラーメン」は、果たしてトップの座を守りきれるだろうか。