adv.yomiuriトップページへ

ojoトップ  > 広告リポート  > from Europe  > 広告に編集力と仕掛けが求められている

広告リポートfrom Europe

(Mon Dec 07 10:00:00 JST 2015/2015年12月・2016年1月号 from Europe)

広告に編集力と仕掛けが求められている
国友 俊   パリ駐在

  今年の仏カンヌライオンズのPR部門で、見事二つの金賞と一つの銀賞を受賞した英国政府観光局のVisit Britainキャンペーンは、消費者のクリエイティブ力を問う企画として目を引いた。購買力が高い中国人を誘致するためのプロジェクト「Great Chinese Names For Great Britain」は、特設ウェブサイトで「英国を代表する101の観光地や建物の名称に中国語のニックネームをつけてください」と一般募集するシンプルなもの。地理的に遠いことなどから、これまで中国では英国人気は高くなく上位50か国中14位程のランクであったが、本企画によって27%も観光客が増えた。上海でのスタートイベントを皮切りに、プロモーション動画を映画館、タクシー、OOHなどで展開したことで2,700万人以上が目にした結果、13,000件にも上るニックネームが投稿された。SNSでのシェアによって、最終的に3億以上のアクセスに繋(つな)がったそうだ。投稿の中には、ビートルズで有名なアビーロードを「愛とサヨナラの通り」と名付けるなど、素晴らしい発想のものが多く見られた。

  このキャンペーンは、中国人が古くから自分の名に英語名の愛称をつける習慣があることに着目し、ローカライズに成功したことがポイントだったと言える。一般人にキャッチーなコピーを応募させるためには思わず参加してしまうような「仕掛け」が大切な要素となるが、この企画の場合、その必要性がないほど中国人の心を見事に捉えた。日本人に対して同じコンセプトの企画を行っていたら、ここまでニックネームの投稿が集まらず、盛り上がりもしなかったのではないだろうか。

  話題を転じて、近年欧米で注目されているネイティブ広告をはじめとするブランデッドコンテンツについても触れたい。進歩が速い英国の中でも、特に高級紙のガーディアンはクリエイティブLabを2年程前に立ち上げ、130人の編集、デザイン、制作チームを作り上げた。卓越したマーケティングに定評のあるユニリーバ社とLive better challenge(より良い生活の挑戦)をスタートし、「持続可能な社会」をコンセプトにエネルギー削減やリサイクルについて、宣伝色の強くない記事やドキュメンタリー動画などのネイティブ広告をオンライン展開したほか、同紙の教員ネットワークを活用して、教育現場で子供たちと共に環境に関する授業や様々な活動も行っている。

  ここで重要な点は、新聞社の編集チームが主体となり、広告主から独立した形でコンテンツを制作しているということ。商品に直結する話題も掲載されるが、あくまで別枠になっているため押し付けがましくなく、興味のある読者だけが読める構成になっている。これにより広告主とメディア、双方のブランド価値を損なうことがない。

  スマホの普及によって個人単位でパーソナルメディアを保有する時代が訪れ、メールや投稿、シェアがすぐさま行えるようになった今、前者のように一般人の競争心を掻き立てる仕掛けが、自分ごと化を促す有効な手段の一つと言えよう。そしてパーソナル性が強まると宣伝色への抵抗が起こるため、後者のネイティブ広告がそれを回避できる手段として注目されているが、どのメディアもまだ最適なソリューションを模索している状態と言える。信頼されるメディアの編集力に期待が集まっていることは間違いない。

国友 俊・パリ駐在

パリ同時テロの影響でご心配をおかけしておりますが、無事に過ごしています。この先何が起こるか予測がつかず緊迫した状況が続きますが、安全第一で過ごしています。人生の中でこれほど戦争を身近に感じたことはなく、一刻も早い平穏の回復を願うばかりです。