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広告リポートfrom Europe

(Fri Feb 05 10:00:00 JST 2016/2016年2・3月号 from Europe)

洗練されたビジュアルが評価される欧州
国友 俊   パリ駐在

  海外での生活で便利なのは、スマホがあれば情報をいつでも多言語で入手できることだ。テロがあればニュースアプリを開き、慣れない土地ではGPS地図を使う。情報の大部分は写真や動画、イラストなどのビジュアルコンテンツだ。デジタルコンテンツの専門家によると、画像付きのSNS投稿の9割以上が、画像なしの投稿に比べ約2倍も多くビューをかせぎ、シェアされるそうだ。私も一利用者として同感である。膨大な情報に接触するいま、文章を読まずとも一目で分かる情報を、潜在意識の中で求めている。

  今回のテーマ、インフォグラフィックスも複雑なデータを色々な視覚化手法を駆使して表現するビジュアルコンテンツの一つだ。同分野の創始者の一人がフランス人のシャルル・ジョゼフ・ミナール氏であると言われており、彼はナポレオンのモスクワ遠征を見事に視覚化し、同軍が次第に消耗していく様子を、当時の気温、兵の数、渡った川の位置、進軍方向、時間などのデータを複合的に一つのビジュアルにまとめた。侵入時42万人以上いた兵士が、退却時にはわずか1万人まで減ってしまった実態を、一目して分かる名作として語り継がれている。このように欧州では歴史的に、美しく情報を整理することを評価する土壌があると言える。

  当時は2次元のインフォグラフィックスが精一杯であったが、現在は音声、動画を用いた進化形がオンライン上では見られる。グーグルがスポンサーを務める「データジャーナリズム・アワード」が2012年に誕生したが、同賞を含め数々のジャーナリズム賞を手中に収める、英国の制作会社KILNが注目に値する。同社はインフォグラフィックスを得意とする制作会社で、BBCや英ガーディアンなど一流メディアをパートナーに持ち、同社が抱えるデータビジュアリストがメディアと共同でインフォグラフィックスを制作する。環境問題をはじめ、経済、歴史、スポーツなど、ジャンルを問わず対応し、関心の集まった事例としてはガーディアンと第1次大戦の対話型ドキュメンタリーを発表している。

  続いてインフォグラフィックスを活用した広告事例を紹介したい。ノルウェーの航空会社AVINORが、ブランドの認知向上と大自然の魅力を伝えることを目的に、大手民放とデジタルを駆使し展開した「FLY WITH US」キャンペーンは、仏カンヌ広告賞のメディアとサイバー部門で入賞している作品だ。3週間にわたり、毎日主要エリアをヘリコプターで上空撮影し、テレビ中継すると共に、オンライン地図上で全航程と標高などをインフォグラフィックスで表現。フィヨルドや山脈の景色については、360度映像でも見られるようにした。100万以上のサイトアクセスがあり、TV番組は4700万人が目にしたそうだ。外国人旅行客の増加を目指す日本でも、隠れた観光地を紹介する仕掛けとして参考にしたい。

  欧州では、ビジュアルを評価する文化的思想が、あらゆる分野に存在する。新聞にもデザインを表彰するアワードがあり、速報性、解説機能だけでは足りず、一流メディアと言われるには美的センスが問われる。欧州大手新聞の一面を見れば明らかだが、写真やインフォグラフィックスが大部分を占めている。洗練されたデザインで、かつ一目で理解できる情報を制作する技術を、日本のメディアもより一層磨きたい。

国友 俊・パリ駐在

パリ同時テロ以降、冷え込んでいる個人消費。セール期間が始まり、ようやく消費回復の兆しが見え始めている。パリのファッションに注目すると、みな自由で個性的。やはりデザインとビジュアルを重視する人々だと改めて感じる。