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特集ファンとコミュニケーションする

(Wed Aug 05 10:02:00 JST 2015/2015年8・9月号 特集)

攻めの企画を期待するガリガリ君ファン
赤城乳業株式会社   営業本部 営業統括部マーケティング室 次長 ガリガリ君プロダクション プロデューサー   萩原史雄 氏

萩原史雄 氏

口コミマーケティングの成功事例として、必ずと言っていいほど取り上げられるのが赤城乳業の「ガリガリ君」だ。1本60円の超日常的な商品であるガリガリ君は、幅広い年代に愛されているだけでなく、エッジの効いたキャラクターの活用と徹底した口コミ戦略で、熱狂的ファンも多い。ガリガリ君の施策をファンとのコミュニケーションという視点から問い直してみた。

──ガリガリ君を支持する層というのは、どういう人たちでしょうか。

  マクロミルのブランドデータバンク(2013年)によると、「好きなアイス」でガリガリ君は20歳から54歳までの男性でトップ、2007年では15位以下だった55歳以上でも3位になっています。女性の場合は「ハーゲンダッツ」がトップですが、それでもガリガリ君はどの年代でも2位、3位くらいになっています。これも2007年時点では50歳以下で10位前後、50歳以上では圏外から上がってきたものです。
  私がマーケティングを担当するようになったのは04年10月からですが、ガリガリ君が大きな転機を迎えたのは、その5年前です。それまでコンビニエンスストアとスーパーマーケットを販売チャネルにして売り上げを伸ばしていたのですが、徐々に鈍化していたのです。打開策を見つけるため、全国3万人規模の消費者調査を実施しました。その結果、それまでのキャラクターは女性から「汗が泥臭い、歯ぐきが汚い、田舎くさい」と見られていて、「絶対に買わない」という結果が出たのです。製品が嫌いなのではなく、キャラクターが嫌われていた。それで、2000年に全面リニューアルを決定し、キャラクターを一新、初めてテレビCMも実施しました。00年に1億本を突破した年間販売本数は04年には1億4800万本に達しました。

お金をかけない企画から

──マーケティング担当になった時、1億4800万本から、さらに売り上げを伸ばす自信はあったのでしょうか。

  それまで営業をやっていて、ガリガリ君は確かに売り上げは伸びてはいるけれど、ポテンシャルはこんなものではないだろうと常々感じていました。それを会社に言ったら、「じゃあ、お前がやれ」。何でも言い出しっぺにやらせるのが、うちの会社なんです。

ガリガリレインボー売り場

  そうは言っても、当時は宣伝予算もありません。それで最初にやったのが、「ガリガリレインボー売り場」でした。フレーバーが異なる7種類のガリガリ君を虹のように並べて陳列してもらうというものです。そうすると、店頭でそれを見た親子の間に「何味にしよう」という会話が生まれるんですね。実は、コンビニエンスストアやGMSの担当だった時に、その売り方で1店舗で5日間4000本を売った実績があったのです。それを全国展開したものです。
  次に、お金をかけずに話題を作る方法として考えたのがコラボレーションです。コナミとゲームを作り、小学館とはガリガリ君の漫画の連載、バンダイとはガチャガチャのストラップも作りました。「ガリガリ君の話題を作ることで、アイス売り場に人が呼べる」。そういう手応えを感じた1年でした。
  06年は、企業メッセージ、ホームページ、社章を一新し、全社員を巻き込んだガリガリ君25周年キャンペーンを行いました。山手線のアドトレイン、東京メトロとタイアップした花火大会のうちわ配布、Jリーグ、キディランド、キャンプ場などでのサンプリング、このあたりから少し仕掛けが大きくなってきました。今も夏限定で行っていますが、「今日の天気だとガリガリ君が何本食べられるか」という天気予報「ガリ天」も、この年から始めています。

夏限定の天気予報「ガリ天」

──ファンクラブを作ったのも、この頃ですか。

  子どもの時はガリガリ君を食べていたのに、社会人になると食べなくなるというデータがあり、それで考えたのが「ガリガリ部」というファンクラブです。ガリガリ君がイチバンおいしく感じられるのは、学校からの帰り道、部活が終わって、みんなでくだらない話をしているときです。バーチャル部活動なら、卒業生でも、その『部活気分』を味わえるということで始めたんですね。
  当たり棒を郵送すると自分の名前と部員番号の入った「ゴールド部員証」がもらえるキャンペーンを実施したのですが、届いた当たり棒が千本ありました。「ゴールド部員証」と言っても特典は何もありません。当時の部員は約1万人ですから、当たり棒の確率から計算すると、その10%の人が当たるまで1週間ガリガリ君を食べ続けたことになります。それから、3か月経って部員は5万人に増えますが、このガリガリ部員に対するアンケート結果から、マンゴー味のガリガリ君を作り、大ヒットしました。

ガリガリ君の妹「ガリ子ちゃん」アイス

  口コミを意識的に活用するようになったのも06年からです。需要が低下する冬の対策として、ガリガリ君の妹「ガリ子ちゃん」アイスを発売しました。ある日、アイス売り場からガリガリ君が消えて「ガリ子ちゃん」しかいない。そうすると検索ワードで「ガリ子ちゃん」がいきなり5位になり、「2ちゃんねる」では「ガリ子ちゃん」の萌(も)え系論争も起きました。それから、1本60円のガリガリ君の高級版「ガリガリ君リッチ」を100円で発売したのですが、おみくじを取り入れた「ガリガリ君リッチ」は「合格に効く」と新聞でも話題になりました。札幌ではマイナス16度の冬にサンプリングを行い、地元の新聞に取り上げられました。こうした努力の結果、女子中学生の人気ナンバーワンアイスがガリガリ君ソーダになり、この年の冬のガリガリ君は例年の約2.5倍も販売本数を伸ばしました。
  「ウェブ2.0」と言われたのもこの頃で、06年は、ネットの口コミから想定外のターゲットに響くことや、生活シーンの中に尖(とが)った話題を置くことの重要性を認識した年でした。会社では販売のアイデアを“コネタ”と呼んでいるのですが、この年以降、「あらゆるコネタを生活シーンに散らす」努力をするようになりました。

新規顧客獲得を狙った初めての大ネタ

──やはり施策はコネタの積み上げが基本なのでしょうか。

  10年には新規顧客拡大を狙った「大ネタ」にも挑戦しています。背景を説明すると、この年に新工場、本庄千本さくら『5S』工場が完成しました。60円のアイスを売るのに100億円近い投資をしました。ガリガリ君の生産能力は大幅アップしたのに、その前年のガリガリ君の売り上げは96%と前年割れしていたのです。

  09年の段階でガリガリ君は販売本数ではおそらく日本一のアイスになっていました。悩んでいると、街の本屋で偶然手にした書籍にアイスのランキングが載っていて、ガリガリ君を食べている人は13.9%しかいないということがわかったのです。10年はワールドカップが南アフリカである年でした。サッカー日本代表の当時の視聴率は約53%、人数にすれば6700万人、ガリガリ君は1800万人。新たに4900万人のガリガリ君ファンを獲得するチャンスです(笑)。
  もちろんお金がかかる話ですが、タイアップしました。10年は歴史的猛暑と言われている年ですが、アイスクリーム全体の購入率は100.8%と1%しか伸びない中、ガリガリ君は137.0%と、一気に1.4倍近い人がガリガリ君を買ってくれました。その流れで11年は、ポケモンとコラボレーション。コネタの上に国民レベルの大きな話題を重ね、アイスクリーム売り場にお客様を集めていこうと大きな展開にしました。

攻めの路線が好きなガリガリ君ファン

──ガリガリ君といえばコーンポタージュ味ですけど。

ガリガリ君リッチ 衝撃シリーズ3部作「コーンポタージュ」(2012年)、「クレアおばさんのシチュー味」(2013年)、ナポリタン味(2014年)

  コーンポタージュ味の発売は12年です。ガリガリ君のコーンポタージュ味はどこからアイデアを出したのかよく聞かれるのですが、信頼している、あるバイヤーから言われた一言がきっかけです。
  実は、先ほどの10年に売れたことで、品薄騒動があり、マスコミ、流通から批判されました。翌11年にも梨味で欠品を起こしてしまいます。それで、12年の目標は安定供給を目指してやっていたところ、「夏のガリガリ君の開発、攻めていないよね、守っているよね」と、あるバイヤーからきつい一言を言われたのです。それを発奮材料に社内から出てきたのがコーンポタージュ味というアイデアでした。この商品は、ヤフーのトップ記事を7回獲得したほか、情報番組でも度々紹介されました。このキャンペーンに使ったPR予算は15万円だったのですが、それが広告費換算で5億5000万円規模の露出になりました。その結果、ガリガリ君のコーンポタージュ味は、販売予測を大幅に上回り3日で販売休止になってしまったのですが。

──ガリガリ君ファンを意識した施策というのは、特に行っていないのでしょうか。

  「ファンに楽しんでもらう、遊んでもらうにはどうすればいいか」という気持ちでいつもコネタを考えています。コーンポタージュ味のきっかけを与えてくれたバイヤーが言ってくれたように、熱狂的なロイヤルユーザーは、ガリガリ君が“しょーもないことをやってくれる”ことを期待している。そういう「攻めの姿勢」が好きなんだと思います。

──ガリガリ君のロイヤルユーザーはどういう人たちなのでしょうか。

  ロイヤルユーザーもタイプが分かれています。梨味好きのファンはアイスのおいしさを求める人たち、コーンポタージュ味好きはネタ消費のファンが多いなどさまざまです。
  07年まではコネタの積み上げ、10年は大ネタの導入、12年はコーンポタージュ味に象徴される口コミの拡大ということで売り上げを伸ばしてきましたが、問題はここから先ですね。口コミも12年がピークだったというのが実感です。

──具体的な方向は見えているのでしょうか。

  現在、模索中です。新しい試みとして7月23日から、日本郵便とのコラボで、〝「ガリガリ君つきかもめ~る」キャンペーン”を実施しています。かもめ~るを10枚以上購入し、さらにその場で簡単なアンケートに回答すると、先着1万人の方が、「ガリガリ君つきかもめ~る」を1枚もらえるというものです。そういうように、ガリガリ君は超日常的な商品なので、普段の生活の中で考えるのがどこまでいっても基本だと思っています。