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ojoトップ  > 特集  > ファンとコミュニケーションする:将棋の楽しみ方は多様 多くの側面を知ってもらう

特集ファンとコミュニケーションする

(Wed Aug 05 10:00:00 JST 2015/2015年8・9月号 特集)

将棋の楽しみ方は多様 多くの側面を知ってもらう
公益社団法人日本将棋連盟   普及免状部 部長   大野木紀良 氏

大野木紀良 氏

下は就学前の幼児から上は白寿を過ぎた老人まで、将棋は老若男女が楽しめる盤上遊戯(ボードゲーム)の一つだ。最近では、将棋を実際に指せなくても、ルールがわからなくても、「将棋を楽しむ」ファンが出てきたという。ここでは将棋の現在と新しいファンの形について、日本将棋連盟の大野木氏に聞いた。

将棋に触れられる機会の増加

──将棋人口について教えてください。

  将棋連盟が運営するアマチュア各種棋戦参加者から、全国各地にある将棋連盟の支部組織、街の将棋教室や学校・地域での活動まで含めて、約1000万人が愛好していると言われています。将棋連盟支部というのは、約700の支部が組織されていて、各地で将棋の普及と将棋文化の振興のために活動している団体です。

──各地の支部は具体的にどのような活動をされていますか。

  “将棋をする場”を創ることが第一義です。そこに行くと、老いも若きも将棋が好きな人たちが集まり、将棋をしたり教え合ったりできる。また、一定の資格を満たした「将棋普及指導員」という会員がいる支部では、経験者の指導を受ける機会もあります。指導員はその活動が支部だけでなく、自分の教室や学校・地域の場で将棋を教えたりしています。昔ですと、小さい頃に父・祖父・兄弟に将棋を教わった、という方も多かったのですが、最近では家に盤も駒もなく家族の誰も駒の動かし方を知らない、という家庭も多くあります。そうした状況下で、指導員の方々はそれぞれの地域に根ざした公民館や児童館、学校のクラブ活動、また高齢者施設の訪問や地域のイベントなどで、将棋の普及・指導に取り組んでいます。指導員の数は安定的増加傾向にあり、将棋を学ぶ場は10年以上前と比べてより開かれてきていると思います。

老若男女、腕の差も気にせず一緒に楽しめる

──将棋をする幼児や小中学生の数も増えてきているということでしょうか。

  はい。正確に数をとっているわけではありませんが、イベント来場者の客層や地域・学校の将棋大会への参加数を見ても、確実に増えてきていると言えます。例えば、昨年のアマチュア竜王戦香川県大会では、小学三年生(8歳)の少年が優勝し、香川県アマ竜王になりました。底辺の拡大が要因の一つに考えられます。

──小さい子供の場合、体や脳の成育上および教育上も、将棋をするといい影響があるのではという印象があります。

  将棋を習慣的にやるようになったお子さんの親御さんからは、「子供がシャキっとした」、「礼儀正しくなった」という声を聞くことがしばしばあります。将棋を学ぶ場では、挨拶から始まり、礼儀や姿勢、立ち居振る舞いなども教えることから、そういった点の教育的効果もあるのだと思います。また約8年前から、「学校教育への将棋導入推進事業」を進めています。学校にプロの棋士を派遣したり、「文部科学大臣杯 小・中学校将棋団体戦」では学校別の団体戦であるため、小学校や中学校での将棋に対する取り組みが盛んな学校が増えてきました。

「観るだけ」という新しい将棋ファン

ニコニコ動画でのプロ棋士とコンピューター将棋ソフトとの棋戦「電王戦」

──将棋をする裾野が広がる一方で、最近ではニコニコ動画でプロ棋士とコンピューターとが対戦する「電王戦」が毎年ニュースになっています。

  プロ棋士とコンピューター将棋ソフトとの棋戦「電王戦」は2012年に当時の将棋連盟会長・故米長邦雄永世棋聖の肝いりで始まりました。「もっと気軽に、開かれた場で多くの人に将棋に触れてもらう機会を作りたい」という米長会長の電王戦実現に至るまでの熱意は並々ならぬものでした。2回目からは選抜された5人のプロ棋士と、世界コンピューター将棋選手権の成績上位5チームによる団体戦で行われ、今年は3回目、プロ棋士の3−2で勝ち越しとなりました。

──ニコニコ動画のなかで、“将棋”は政治とアニメに並んで三大コンテンツと言われているようです。

タイトル戦対局中のおやつにも関心が集まる
棋聖戦五番勝負で羽生棋聖に提供されたスイーツ (提供:ブールミッシュ)

  今春開催された「将棋電王戦FINAL」では生中継で延べ約228万人に視聴いただいたそうです。将棋のタイトル戦を生中継すると平均して20〜30万人が視聴される。将棋をするときのペースというのは、次の手を考えるのに指し手に時間がかかったりするため比較的ゆったりしていて、視聴者は好きな時に来場し、気軽にコメントできる。言わば、現代版の“縁台将棋”の感覚なのだそうです。

──将棋を指さずに観るだけの“観る将”というファンも増えているようですね。

  電王戦やニコニコ動画での露出がきっかけとなり、個性豊かな棋士たちに魅せられたり、将棋を雰囲気で楽しむファンが増えてきているなといった印象があります。ニコニコ動画では好きにコメントできることから、棋士をあだ名で呼んだり、タイトル戦対局中のおやつにも関心が集まったり、当初は予想もしなかった方面でも盛り上がっているとのことです。将棋に触れるきっかけが増えているいまの現状を生かして、ますます多くの方々に将棋の魅力を発信していけるよう取り組んでいきたいと思います。