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特集広告を「編集」する。

(Mon Dec 07 10:00:00 JST 2015/2015年12月・2016年1月号 特集)

ブランド醸成のためのネイティブアド
NewsPicks   ブランドデザイン チーフプロデューサー   久川桃子 氏

久川桃子 氏

「NewsPicks」 というソーシャル経済ニュースアプリがある。経済ニュースに対する著名人のコメントが読めるというのが大きな特徴だ。その「NewsPicks」 が社内にブランドデザイン専門チームを立ち上げ、今後はブランド醸成のためのネイティブアドを中心に広告を一新するという。その狙いを、チーフプロデューサーの久川桃子氏に聞く。

──「NewsPicks」の特徴からお聞きしたいのですが、経済ニュースに特化したキュレーションメディアと考えていいのでしょうか。

  私たちは「NewsPicks」を「ソーシャル経済ニュース」と呼んでいます。「NewsPicks」の特色は三つあります。
  一つ目は、「ニューヨーク・タイムズ」「フィナンシャル・タイムズ」「ウォール・ストリート・ジャーナル」「ブルームバーグ」「日経ビジネス」といった国内外のメディアと提携して、経済ニュースをワンストップで見られることです。そういう意味では、まさにキュレーションメディアです。
  二つ目は、それだけでなく、社内に編集部があり、オリジナル記事や専門性の高い解説を配信していることです。
  三つ目は、これが「NewsPicks」を「ソーシャル経済ニュース」と呼ぶ理由でもあるのですが、ピッカーのチョイスをベースにトップに掲載するニュースを構成して見せていることです。

  各記事には自分が注目した記事をチェックする「Pick」ボタンが付いていて、Pickした人をピッカーと呼んでいます。さらに、記事にコメントを付けてくれる各分野の専門家「プロピッカー」もいて、その記事のピック数、コメント、そのコメントに対するライク数が付くという形で構成されています。プロピッカーには、インテグラルの佐山展生さん、一橋大学の楠木建教授、夏野剛さん、堀江貴文さんなど、現在110人以上の方がいます。さらに、自分の友達やこうした専門家をフォローすることで、フォローしている人が選んだニュースが自分のタイムラインに上がってくる仕組みになっています。

──ユーザーは、やはりビジネスマンが多いのでしょうか。

  ビジネスマンと就職活動前の学生ですね。今年の自社調査ですが、ユーザー数90万人(2015年11月時点)、その内DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)が30万人です。年齢層は25歳〜34歳が41%、35歳〜44歳が34%、合わせて75%で、圧倒的に男性が多い。役職では課長以上の意思決定層が29%を占めています。
  それから、一度見にきた時の全ユーザーの平均滞在時間が11分と比較的長いのも特徴です。ニュースのコメントを見たり、コメントを書くことがユーザーに根付いているので、他のニュースアプリに比べ長くなるのだと思います。ワンアクションで40分ぐらい滞在するヘビーユーザーも少なくありません。
  閲読時間のピークは、朝の7時から8時で、おそらく通勤途中の電車の中で見ている人が多い。実は有料記事も公開して24時間以内のものは7時から8時の間は無料で読めるので(15年10月末でキャンペーン終了)、それも大きく影響していると思います。後はやはり昼休み、それから帰宅時間の夕方6時以降ですね。

インプレッションからブランド醸成へ

──「ネイティブアド」の定義はいろいろあるようですが、「NewsPicks」ではどのように考えているのでしょうか。

  「NewsPicks」として定義しているわけではありませんが、私個人としては「編集記事と同じプラットフォームで流れる広告」と思っています。

特定のカテゴリーの中にニュースと同じフォーマットで表示されるインフィード広告。「NewsPicks」では「ブランド・パネル」と呼んでいる。

──特定のカテゴリーの中に同じフォーマットで表示される「インフィード広告」も、ネイティブアドの一つですね。

  「NewsPicks」でいうと「ブランド・パネル」がインフィード広告にあたります。実は、「NewsPicks」では、そうしたネイティブアドをブランド醸成に積極的に使っていこうということで、この夏に広告の仕組み全体を見直し、改革は現在も進行中です。

──どういう見直しなのでしょうか。

  これまでPC中心に成長してきたウェブ広告は、インプレッション、先方サイトへの誘導で評価されてきました。ところが今はスマホが中心です。スマホの画面はPCに比べ小さいですから、そこにバナー広告が表示されると邪魔になる。それで、私たちは広告にも、スマホに最適化したクリエイティブ、仕組みが必要だと考え、他のニュースと同じコンテンツ、ブランド醸成のためのコンテンツとして提供しようと考えたのです。
  「私たちはブランド広告しかやりません」という言い方をしているのですが、そのためのブランドデザイン専門チームも編成しました。最初に社内にオリジナル記事、独自コンテンツを作る編集部があると言いましたが、私たちブランドデザインチームは、マーケティング活動における独自コンテンツを作る第二編集部だと思っています。

4つのブランドコンテンツ

──具体的には、どういう仕組みで広告を提供するのでしょうか。

  4つのブランドコンテンツを用意しました。「ブランド・アカウント」「ブランド・ストーリー」「ブランド・パネル」、そして「ブランド・カテゴリー」の4つです。
  〔ブランド・アカウント〕
  自社コンテンツを配信していく入れ物がブランド・アカウントです。オウンドメディアの記事や他の媒体でタイアップした記事も格納できます。ここでフォロワーになると、タイムラインにその企業の記事が表示され、今後はダイレクトにプッシュ通知ができるようになります。「NewsPicks」にアカウントがあることで、オウンドメディアにあるコンテンツへのアクセスも高めることができます。
  例えば、オラクル様の「ブランド・アカウント」を見ると、フォロワー数3026人の後に、オラクル様が配信している記事が表示される。その記事がフォロワーのタイムラインにも表示されます。ブランドデザインの起点になるのが「ブランド・アカウント」で、「NewsPicks」で広告を展開するためには、この「ブランド・アカウント」をまず作ってもらう必要があります。アカウントを持っていただき、フォロワーを増やしていくことで長期的にブランド醸成をしましょうという考え方なんですね。
  〔ブランド・ストーリー〕
  「ブランド・ストーリー」というのは、新聞社でいう「企画広告」、雑誌でいう「編集タイアップ」です。ただし、社内にブランドコンテンツ専門チームがあり、制作監修をしています。社内にはインフォグラフィックのエディターもいますので、スマートフォンの画面に最適化して、複雑なデータもわかりやすく視覚化したコンテンツとして提供することができます。もっともオーソドックスな使い方が、「ブランド・アカウント」とこの「ブランド・ストーリー」の組み合わせです。
  〔ブランド・パネル〕
  先ほども言ったように、インフィード広告を「ブランド・パネル」と呼んでいます。「NewsPicks」では、「タイムライン」だけでなく、「総合トップ」やテーマ別にもニュースを表示していますが、そうしたニュースの中に差し込まれるのが「ブランド・パネル」です。他のニュースと同じフォーマットですが、スポンサードされたスペースであることを明示するために、「this space issponsored」と表示し、各テーマで2枠までという制限を設けています。
  〔ブランド・カテゴリー〕
  テーマ別のカテゴリーとしては「ビジネス」「政治・経済」「金融・マーケット」などがあり、タブを選ぶとテーマ別のニュースが表示されますが、それと同列の独立したタブを企業に提供しようというのが「ブランド・カテゴリー」です。その企業のブランド醸成のためだけに、ニュースを集めて表示しています。
  現在「ブランド・カテゴリー」は、IBM様の「イノベーション」と、大和ハウス工業様の「資産マネジメント」の2つです。例えば、『MIT Technology Review』と提携し、IBM様のイノベーションというブランドイメージにフィットすると判断した記事を「NewsPicks」で選定し、イノベーションタブに掲載します。「ブランド・カテゴリー」は、3枠までという制限を設けています。

──『MIT Technology Review』の記事というのは、ネットで公開されている記事ですか。

  基本的にはオウンドメディアの記事以外はウェブ上のどこにもない記事をここに持ってきています。海外の記事なら翻訳して掲載しています。ウェブ上ではここにしかない記事との出会いを大切にしています。

同じ土俵で戦う記事とタイアップ広告

──一般の記事と「ブランド・ストーリー」の記事では、ピック数に違いはあるでしょうか。もっと言えば、広告的な記事は読まれないということはあるのでしょうか。

  ご理解いただきたいのは、一般の記事と「ブランド・ストーリー」、企業のオウンドメディアの記事は、「NewsPicks」では同列だということです。同じプラットフォーム上に並ぶのでユーザーからピックされ、コメントが付かなければ、結局、アルゴリズムで掲載順が上に上がらず埋もれてしまう。ユーザーにしてみれば記事も広告も関係ない。「NewsPicks」という一つのプラットフォーム上のコンテンツだということです。ただし、広告のほうが有利な点があるとすれば、「ブランド・パネル」は各テーマで2枠までという制約の中で、有償で再度掲載することができることです。一般の記事はピック数が少なければ再浮上は難しい。そこは違うところですね。

──編集部の方針とぶつかるということはあるのでしょうか。

  あまりないですね。というのは、やはり私たちブランドデザインチームにとって「NewsPicks」というプラットフォームが第一だからです。新聞や雑誌に近いところだと思いますが、「NewsPicks」には有料の読者もいるので、ユーザー体験を損ねるようなコンテンツは掲載できない。メディアのクオリティーを高めることが、ブランド広告を広く理解していただくことになると思っています。

──記事と同じクオリティーが「ブランド・ストーリー」にも求められる?

  編集部のステークホルダーは100%ユーザーだと思いますが、私たちブランドデザインチームはユーザーにも満足してもらいながら、クライアントの要望も叶えなければいけない。一つ変数が多いのです。
  それから、これはあまり言われてないことだと思いますが、「ブランド・ストーリー」はクライアントのニーズに応じてお金をかけられるということはあると思います。必要な場合は、タレントにスタイリスト、ヘアメイクを付けて撮影することもあります。ネットメディアは、これまでコンテンツにお金をかけられないところがあったと思いますが、ブランド醸成のためには、お金をかけるべきだという理解が広がりつつあります。

──新聞と「NewsPicks」のタイアップは可能でしょうか。

  記事コンテンツでは、雑誌と「NewsPicks」のタイアップはあるのですが、広告ではまだないですね。デジタルとマスメディアの窓口が広告会社からして違うということも要因としてあるかもしれません。ただ、今後はブランド醸成を目的に新聞やテレビ、ラジオの企画広告とのタイアップも面白いとは思います。

──その場合も、タイアップ広告の評価が「NewsPicks」でしっかり出てしまうわけですね。

  これまでの経験でも、広告主の言いたいことを一方的に詰め込んだ広告は、ほぼピック数が少なくなります。「ブランド・アカウント」のフォロワーにならないと、記事が読めない設定にしてフォロワーを増やそうとしても、広告然とした記事には「なぜ、これがフォローしなければ読めない記事なんだ!」というコメントが一斉に付きます。「NewsPicks」は広告主にも、作るほうにも、甘えが許されないプラットフォームなんですね。そこが大変だし、面白いところでもありますね。

Momoko Kyukawa

一橋大学商学部卒業後、外資系金融機関を経て2002年、日経BP社に入社。日経ビジネス記者として医薬品、運輸などを担当。2度の出産、育休の後、ソーシャル意識の高いママ向け雑誌「ecomom」のプロデューサー、編集長を務め、媒体を黒字化に導く。2015年3月より、「NewsPicks」に参加。双子を含む小学生3人の母。